【2nd Kitchen コラム】アスリート スポーツ選手の身体作りのための食事管理⑥

三大栄養素のうちの糖質について考えて来ました。次は脂質についてです。脂質は脂肪に直結し、太るため控えるべきだと思っているアスリートも多いかもしれません。しかし、実際はどうでしょうか。

アスリートにとっての”脂質”

生命維持のために必要な脂質。脂質は皮下や腹腔に貯蔵されているもの(我々がよく口にする、いわゆる脂肪)のみならず、生体膜や脳、神経細胞の構成成分でもあります。よってアスリートの身体にとっても欠かせない栄養素の一つです。脂質は1gが9kcalであるため、アスリートにとっては効率よくエネルギーを摂取できる栄養素でもあります。脂質の摂取量が総エネルギー摂取量の20%以下(日本人の食事摂取基準2015年版では総エネルギーに占める割合が20~30%を目標量として記されている)の食事を長期間続けると、脂溶性ビタミンの減少や必須脂肪酸の摂取不足に陥る可能性があります。また、脂質の摂取量が少ないアスリートは、骨膜炎や筋膜炎・肉離れなどの筋肉や膜の損傷が多いと言われています。故障がなかなか治らずに再発に苦しむことが多い傾向にもあるようです。

アスリートにとっての脂質摂取

エネルギー源として最初に利用されるのは糖質であり、その後、長時間に渡る運動を行った場合、脂質がエネルギー源として利用されますが、高脂質食や断食などの糖質の少ない食事を続けたからと言って、脂質が早期にエネルギー源として利用されるわけではありません。なお、低・中程度の運動の場合、運動量に比例して脂質がエネルギー源として利用されますが、高強度の場合は酸素の摂取が妨げられるため、糖質を使ったエネルギー代謝となり、脂質の利用は抑制されます。よって、糖質が少ない高脂肪食はパフォーマンスの低下につながります。ゆえに食事を考えるときには、糖質の必要量は確保したうえで、エネルギーを摂る意味で脂質を活用し、無理なく食べることの出来る食事を考えたいものです。例えば、メイン、つまりは主菜の調理法に”蒸す”を用いたとします。もちろん低カロリーのため、その分、ごはんなどで必要量をまかなわなくてはなりません。しかし、”揚げる”、”炒める”調理法を用いたとします。すると、高カロリーとなるため、同エネルギー量を摂取する場合に、量的には少なくて済むことになります。メインに揚げ物を入れたり、スープに油を垂らすことでエネルギー量を増やす方法ですね。また、運動前や運動中以外の補食として油の入った食品を選択するのも一つの方法です。エネルギーを不足なく摂取する場合に脂質は有効です。

脂質の種類

脂質といっても油の種類にも気を付けたいですね。飽和脂肪酸を少なくし、必須脂肪酸を中心としてた不飽和脂肪酸の割合を多くして摂取する方が良いと言われています。しかし、不飽和脂肪酸の中でもマーガリンなどに含まれる、トランス脂肪酸の摂り過ぎには注意したいところです。一定以上摂取することで、虚血性心疾患のリスクを高めると言われています。アスリートは一般の人よりも食べる量が多くなることから、含有量が少量の食品であっても注意が必要です。