【2nd Kitchen コラム】三大栄養素 その3 脂質

今回は三大栄養素のその3、”脂質”です。

脂質

脂質とは脂肪と脂肪性物質を総称したものです。我々がふつう、脂肪と言っているのは、脂肪酸と各種アルコールが結合した高分子化合物のことです。中性脂肪は、アルコールの仲間であるグリセロール1つに、脂肪酸が3つ結合(トリアシルグリセロール)した下図のような構造の形をしています。脂肪は、人体の構成成分の中で水分の次に多い成分であり、成人男性では約1520%、成人女性で約2025%です。

種類

脂質はその構成成分により、単純脂質、複合脂質、誘導脂質に分類されます。

●単純脂質

前述の中性脂肪が分類され、貯蔵脂質として皮下や腹腔などに蓄えられ、必要に応じてエネルギー源として利用されます。また、中性脂肪は、熱伝導性が低いので体温維持に役立ったり、弾力性があるため、クッション役として臓器を保護する働きがあります。

●複合脂質

リン脂質糖脂質が分類され、単純脂質の一部にリン酸や糖質、塩基などを含んだ構造をしています。リン脂質は生体膜や脳、神経細胞の構成成分であり、糖脂質は細胞膜として各組織の特異的な性質を発現させるのに役立っています。なお、エネルギー源にはなりません。

リン酸1個のリンと4個の酸素で構成されている物質であり、生体内ではほとんどリン酸の形で存在

塩基:化学反応において、酸と対に働く物質

●誘導脂質

ステロールが分類され、コレステロールや胆汁酸、性ホルモンなどが相当します。細胞膜の構成成分などとして、体内に広く分布しています。

脂肪酸

●飽和脂肪酸

構造上、二重結合を持たない脂肪酸のことで、肉類や乳・乳製品の脂肪に多く含まれています。飽和脂肪酸を多く含む脂肪は、融点(固形が液体となる温度)が高く、バターのように常温でも個体であることが特徴です。飽和脂肪酸は、中性脂肪やコレステロールなどの血液中の脂質濃度の上昇に関与し、脂質異常症や動脈硬化との関連が高いと考えられています。バターの代わりにしばしば使用されているマーガリンの原料はパーム油ややし油の植物油ですが、飽和脂肪酸が多く、また製造過程において不飽和脂肪酸に水素を添加して飽和脂肪酸に変えてバター様にしてあります。また、この水素添加の際に、血中コレステロール値を上げ、動脈硬化を促進させる物質であると敬遠されている、トランス脂肪酸が生成されます。

●不飽和脂肪酸

構造上、二重結合を持つ脂肪酸のことで植物性油や魚油に多く含まれています。二重結合が1個の物を一価不飽和脂肪酸、2個以上含むものを多価不飽和脂肪酸と言います。二重結合を多く含むために飽和脂肪酸に比べて酸化されやすく、酸化されると過酸化脂質を生じ、食品の劣化の原因となり、マイナスイメージを受けますが、不飽和脂肪酸は結合の仕方によって性質が異なります。一価不飽和脂肪酸のオレイン酸は、HDL-コレステロール(善玉コレステロール)を下げずに総コレステロールを下げる働きがあり、動脈硬化を予防すると言われています。また、体内で酸化しにくいという性質もあります。なお、オレイン酸はオリーブオイルに多く含まれています。

昨今、n-6(ω6)系ないしn-3(ω3)系脂肪酸と耳にすることが増えてきました。63というのは、二重結合の位置のことです。n-6(ω6)系の、血中コレステロールを低下させると言われているが、過剰の摂取はアレルギー等を引き起こします。また、n-3(ω3)系は、中性脂肪を低下させると言われているなど、その他生活習慣病の予防に関係していると言われています。なお、青魚に豊富なDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)はn-3系の多価不飽和脂肪酸です。

必須脂肪酸

たんぱく質のアミノ酸と同様にヒトが体内で合成できない脂肪酸が存在します。それらは、多価不飽和脂肪酸のリノール酸、αリノレン酸と言い、また、合成は可能であるが、量的に少ないために食事から摂取しなければならないとされている、アラキドン酸の3つを必須脂肪酸と呼んでいます。必須脂肪酸のおもな機能は、生体膜を構成しているリン脂質の脂肪酸として物質透過などの機能保持に関与していること、血漿中のリポたんぱく質の構成成分として脂質の運搬に関与し、血管へのコレステロールの沈着や脂質異常症の抑制に効果があると言われています。

 

健康を維持するためには、脂質を過不足なく摂取するだけでなく、上記のように脂肪酸のバランスにも気を付ける必要があります。摂り過ぎると健康上問題が生じるとされている飽和脂肪酸を多く含む食品の摂取を可能な限り抑え、一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸やn-3系の多価不飽和脂肪酸を多く含む食品を積極的に摂ることが望ましいとされています。調理の際は一価不飽和脂肪酸を多く含む植物油を使用し、11食は主菜を魚料理にすると望ましい摂取比率に近付くでしょう。