【2nd Kitchen コラム】三大栄養素 その1 糖質

栄養素

栄養とは、「ヒトが健康に生きていくために、食べ物を摂取し、またそれが体内で利用される過程」のことを表す言葉であり、栄養素は摂取する物質の個々の物のことを示します。ヒトの栄養素を大別すると、糖質たんぱく質脂質ビタミンミネラルの5群であり、これらは五大栄養素と呼ばれています。また、前3者は摂取量が多いことから三大栄養素と称されています。

今回は、その1として”糖質”についてです。

糖質

糖質は、炭素・水素・酸素の3元素で構成される有機化合物であり、炭水化物は糖質と食物繊維を合わせた総称です。なお、糖質は消化されますが、食物繊維は消化されません。

さて、平成29年国民健康・栄養調査の結果、炭水化物(糖質)の総エネルギー量に占める割合は、男女ともいずれの年齢階級においても50%以上と、たんぱく質および脂質に比して最も多くなっています。このことより、糖質が主なエネルギー供給量となっていることが分かります。なお、日本人の食事摂取基準(2015年版)によると、炭水化物(糖質)の摂取目標量は、全年齢(1歳未満除く)において50%以上65%未満とされています。

◆糖質の種類

糖質は単糖類、少糖類、多糖類に分類されますが、単糖類はこれ以上分解されない最も簡単な形です。単糖類には、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトースなどがあります。少糖類のうちの二糖類には、砂糖の主成分であるスクロース(ショ糖)、牛乳に含まれるラクトース(乳糖)などが代表的なものとして挙げられます。また、多糖類としてはデンプンがあり、アミロースとアミロペクチンの混合物で構成されています。デンプンは植物の貯蔵多糖で穀類やいも類に多く含まれています。

グルコース

ぶどうに多く含まれるため、ブドウ糖とも呼ばれるグルコースは血糖として血液中に約0.1%の濃度で含まれており、生体内でエネルギー源として利用されています。グルコースのみがエネルギー源である脳、神経系、赤血球にとって血糖値の維持は特に不可欠です。各組織に取り込まれた血糖の損失分は絶えず補われているので、血糖値はほぼ一定に維持されています。食後、血糖は増加しますが、ホルモンの調節によって食後3時間には、正常値に戻っているのです。

グリコーゲン

グリコーゲンはグルコースの貯蔵型、言わば動物性のデンプンです。そして、血糖値維持のために最も重要な働きをしているのが肝臓のグリコーゲン(肝グリコーゲン)です。肝臓ではグリコーゲンの合成と分解が絶えず繰り返されています。筋肉にもグリコーゲン(筋グリコーゲン)は含まれていますが、これは血糖の供給源にはならず、もっぱら筋収縮のエネルギー源として利用されています。

消化・吸収

糖質の分解は口腔よりはじまり、主に小腸で行われます。まず、口腔内では唾液中に含まれるαアミラーゼによってデンプンの分解が行われます。しかし、口腔内の停滞時間が短いため、口腔内での消化はわずかなものです。その後、胃を通って小腸に到達すると、次は膵臓から分泌されるαアミラーゼおよび、小腸に存在する消化酵素によって消化活動が行われます。なお、小腸膜では消化と吸収が同時に行われています。小腸で単糖類まで分解され、吸収された糖は、肝臓へ運ばれます。なお肝臓に取り込まれたフルクトースやガラクトースは、グルコースに変えられます。

吸収後の動き

肝グリコーゲンは、脂肪酸、アミノ酸の合成に利用されたり、代謝されてエネルギー源になったりしますが、一部は血液中にそのまま出ていきます。肝グリコーゲンは必要に応じて再びグルコースに分解され、血液中に出て血糖の供給源となり、各組織に取り込まれて利用されます。筋肉組織では、エネルギー源やグリコーゲンの合成に利用され、脂肪組織では、脂肪に転換されてエネルギー源として蓄えられます。絶食や飢餓状態のとき、食事や肝グリコーゲンから血糖が供給されない場合はアミノ酸、乳酸などからグルコースが作られることで血糖が補われ、血糖値が維持されています。

糖質は他の栄養素と比べて1日の摂取量がもっとも多いにも関わらず、体内に蓄えられる糖質量はほんのわずかです。しかし、糖質の大部分がエネルギー産生のために利用されるため、毎日の食事からしっかりと糖質を摂取しなければエネルギー不足に陥ります。不足分のエネルギーを補うためには体たんぱく質や体脂肪を分解しなければなりませんが、多量の体たんぱく質や体脂肪の分解は臓器や身体に異変をきたします。だからと言って糖質の過剰摂取は、体内における糖質から脂肪への転換による体脂肪の増加を招き肥満の原因となるため、いずれの場合も適度な摂取が望ましいと言えるでしょう。